「ローマ土地制度史 国法と私法への意味付けにおいて」英訳を一応読了。

「ローマ土地制度史 国法と私法への意味付けにおいて」のRichard I. Frankによる英訳を日本語訳の準備作業として一通り読了しました。(注釈を除く。)「中世合名・合資会社成立史」のルッツ・ケルバー氏の英訳に比べると非常にこなれた英語で分かりやすかったです。また訳者が古典語の学者なので、ラテン語の知識という点でもこう言っては何ですがケルバー氏よりはるかに上で安心して読むことが出来ました。一通り読んだと言っても、ほとんど斜め読みなので意味の把握はこれからですが、私見ではこの論文はゴルトシュミットと並ぶもう一人のヴェーバーの大学での恩師であるマイツェン(ドイツ農制史の専門家)の影響下にあるのでしょうが、それ以外に「中世合名・合資会社成立史」の元になっている博士号論文の審査においての、ヴェーバーとモムゼンの論争にもからんでいるのでは、つまりそこで議論されたことをより詳細に調べるという目的と動機があったのではないかと思います。もちろんその時の論争の内容が公開されている訳ではないので推測に過ぎませんが、マリアンネの伝記ではローマの植民市についての何かの概念についての論争だったということです。この「土地制度史」にはローマの植民地における土地税制、農業の実態が中心的なテーマとして取上げられています。しかし農業に関する内容は後半1/3ぐらいで、その前はローマにおける土地の測量と登記の方法、そしてそれにからむ税制の話が延々と続きます。その中でモムゼンが解読チームのリーダーであった、ローマの碑文資料が多数出て来ます。

「ローマ農業史」の日本語訳プロジェクトのスタート

「中世合名・合資会社成立史」の校正もほぼ終ったので、次のステップとして「ローマ農業史 国法と私法への意味付けにおいて」の日本語訳プロジェクトを開始します。まだ訳せるかどうかは分りませんが、これも英訳が出ているのでそれを読んで訳せそうかどうかを判断してから取りかかりたいと思います。今、一冊訳してドイツ語の読解力は大学卒業直前のレベルにほぼ戻ったと思っていますし、またラテン語も復習出来たので、間を空けるより一気にやってしまった方がいいかなと思います。この論文はヴェーバーの2番目の論文で、これで教授資格を得るのですが、これも何故か今まで一度も日本語訳されていません。ページ数は、「中世合名・合資会社成立史」が約200ページでしたが、こちらは160ページくらいで短いです。

「ローマ土地制度史 国法と私法への意味付けにおいて」英訳

まだ「中世合名会社史」の翻訳の準備の段階ですが、そちらがもし何とか終了した場合は、ヴェーバーの主要著作で日本語訳が出ていないのは、「Die römische Agrargeschichte  in ihrer Bedeutung für das Staats- und Privatrecht (1891)「ローマ土地制度史 国法と私法への意味付けにおいて」だけになります。例によってこれも英訳は2008年に、Richard I. Frankによるものが既に出ています。訳者は古典語とローマ史の専門家のようで、社会学者ではありません。日本ではヴェーバーというと宗教社会学の方を取り上げる人が多いように思いますが、私としてはむしろ経済史のジャンルでの功績を忘れて欲しくないです。なお、将来これも翻訳する可能性を考えモーア・ジーベックの全集版も入手しましたが、驚くべき事に版元では既に欠本していて、Amazon.deのUsedで何とか買うことが出来ました。私からすると、ラテン語の知識がより求められるのは、「中世合名会社史」よりむしろこちらの方ではないかと思います。