ここもまた折原デコトラ翻訳の典型例。短い文章の中で以下の6箇所の誤訳、不適切訳。
(1)「都市貴族層が強い疑念を抱いてことごとく排斥した」なんて書いてありませんし、歴史的にもそういう事実はありません。せいぜい都市貴族層が「苦々しく思っていた」というぐらい。
(2) Innewerden は「感じ取ること、理解すること」であり「内在化した状態性」などという意味ではありません。辞書を引かないで想像で訳を作っています。
(3)Euphorieも「多幸症」と病気みたいに訳すのではなく、「多幸状態」「高揚」ぐらいです。
(4)Musik は言うまでもなく、「旋律」ではなく「音楽」です。
(5)Göttlichsten の最上級が訳されていません。
(6)Das Hellenentumはギリシアの民族性、文化、精神という意味でギリシア世界という意味ではない。
原文
Das Hellenentum schätzte, trotz aller Bedenken des Stadtpatriziates gegen den dionysischen Rauschkult, die Ekstase, die akut orgiastische als göttlichen Rausch, die milde Form der Euphorie, wie sie vor allem Rhythmus und Musik vermittelten, als ein Innewerden des spezifisch Göttlichsten im Menschen.
折原訳
ギリシア世界においては、急性の狂騒的陶酔を神的と評価するディオニュソス祭儀の法悦に対しては、都市貴族層が強い疑念を抱いてことごとく排斥したとしても、多幸症的エクスタシーの穏やかな形態、とりわけ律動と旋律に媒介される形態は、独特の神々しい感情が人間に内在化した状態性として、高く評価された。
丸山訳
ギリシア精神は、都市貴族のディオニュソスの陶酔的祭礼、エクスタシー、急性の狂躁的な神的な陶酔など全てへの疑念にもかかわらず、穏やかな形の高揚状態、特にリズムと音楽に媒介されるもののようなものを、特別の最高度に神的なものを感じ取った状態として評価した。