Die römische Agrargeschichteは「ローマ農業史」か?

Die römische Agrargeschichteの日本語訳にようやく着手しました。今目次部分を訳しています。”Zur Geshichite der Handelsgesellschaften im Mittelalter”の時も、それまでのタイトルの邦訳「中世商事会社史」に異を唱えましたが、今回もこれは「ローマ農業史」ではなく「ローマ土地制度史」だと思います。そうでないと後ろに続く「公法と私法への意味付けにおいて」と上手くつながらなくなります。(この論文では土地に関する法律が論じられています。)もちろん古代ローマにおいての土地のもっとも主要な利用方法は建物用を除けば農地としてであり、それ故にagrar(ラテン語ではagrarius)には「農業の」という意味もあります。しかし本来のラテン語の意味は土地=agerに形容詞化語尾の-ariusが付いたもので、「土地制度改革者(農地改革者)の、土地制度の、土地に関する」といった意味です。この論文で論じられているのは、ローマで公有地から私有地への転換がどのように行われたのか、土地制度の歴史を、それがどのように立法化されたのか、例えばBC111年の土地法の規定などを参照しながら論じられています。それ故に「農業史」と意味を限定せず「土地制度史」と訳すべきと考えます。
同様に、これまで「古代農業事情」と訳されているAgrarverhältnisse im Altertumも「古代においての土地を巡る諸事情」だと思います。渡辺・弓削訳は「古代社会経済史 古代農業事情」ですが。

追記(2021年10月21日):本日翻訳にあたっての参考文献として、西洋史学家の村川堅太郎東京大学名誉教授の「羅馬大土地所有制」(日本評論社、昭和24年刊)を取り寄せました。そのP.22に「たとえばWeberが1891年の「羅馬土地制度史」において」と書かれています。表記が違うだけでまったく私の訳と同じでした。これで私の「ローマ土地制度史」という日本語訳が間違いないことの裏付けが取れました。