「ローマ土地制度史」の英訳はお勧めしません。

「ローマ土地制度史 国法と私法への意味付けにおいて」のRichard I. Frankによる英訳ですが、最初にこれだけを読んだ時はこなれた英文でいいかな、と思い、また翻訳者が古典語の専門家なのでラテン語の訳も信用出来るかな、と思いました。
しかしながら、実際に自分で原文をあたって訳し始めると、次のような事実が判明しました。

(1)かなりの部分で原文のドイツ語の意味をねじ曲げて、自分勝手に表面的には意味が通る英文にしている。→学術論文の翻訳でもっともやってはいけないことです。
(2)以前書きましたが、ラテン語起源のドイツ語„tralaticische”を理解出来ていません。
(3)原文に出て来るラテン語をまったく英訳していない箇所が目立ちます。今訳している所に、lex agraria(公有地配分法)の原文が出てきます。ある単語が辞書に無かったので、英訳はどうなっているのか確認しようとしたのですが、何とこの部分を丸ごと飛ばしていて、ラテン語原文すら残していません。
(4)分からない所は注釈も無く、訳さずに飛ばしています。(例えば、P.115{全集版}のConternationsverfahren。(3つで一組にする処置という意味。ベテラン兵士に1ケントゥリアの1/3の土地を割り当てた処置)

(2)~(4)からこの翻訳者が本当に古典語の専門家なのかきわめて疑問に思います。改めてきちんと日本語訳を出さないといけない、と思いました。英訳を今後参考にすることはほとんどないと思います。