折原浩先生訳の問題点(13)

まあ次から次に出て来ます。(笑)

原文
Der Handwerker speziell hat ferner während der Arbeit wenigstens bei gewissen, in unserem Klima besonders stark stubengebundenen Gewerben — so in den Textilhandwerken, die daher überall besonders stark mit sektenhafter Religiosität durchsetzt sind — Zeit und Möglichkeit zum Grübeln.

折原訳
加えては、とくに職人の場合、労働しながら沈思黙考する時間と可能性に恵まれる。少なくとも、われわれ[北欧]の気候風土のもとで、労働が屋内作業とならざるをえない、いくつかの業種については、しかりであり、ゼクテ的宗教性が、そうした条件にある繊維産業の手工業者に、とくに顕著に浸透したのも、そのためであろう。

丸山訳
更に職人は特別に、その仕事の間に、少なくとも特定の、我々欧州の気候においては多くの場合部屋の中で行わざるをえない 生業[注1]において--繊維職人はまさにそうであり、その者達はそのことによりどこにおいても特別に強く教派的な信仰を作り上げたが--熟考する時間と機会を持っているのである[注2]。

注1:欧州一般の話であり、繊維産業が特にそうだとするならば、寒いから部屋の中で仕事するではなく、基本的に雨が降る可能性があったり強烈な紫外線にさらされる屋外では行えない、という意味。
注2:職人は黙々と仕事をしながら考える時間があるので合理的な信仰になじみやすいと言っている訳だがこじつけにも程がある。黙々と仕事をするなら農民も一緒であり、大体仕事中に考え事などは普通しない。また繊維職人のゼクテ信仰もまったく詭弁である。

この”in unserem Klima”を折原センセは「北欧」と書いています。おそらくは北欧は寒いから部屋の中で仕事する、と解釈したんでしょうが、ここは私が注に書いたようにどちらかといえば雨とか強烈な日差しを避けて、という意味でしかあり得ないです。大体ヘレニズム地域の話をしていてどうして北欧に飛ぶのか。ドイツやイギリスの話だとしても「北欧」ではありません。大体染め物とかは紫外線を避けるために薄暗い室内でやるのを知らないんですかね。私は徳島で藍染めの作業場を見たことがあります。歴史知識もないし、世の中一般の知識にも欠けています。

それから注2はヴェーバー自身への批判。ここは本当にひどいです。

 

折原浩先生訳の問題点(12)

原文
Und der namentlich die in der Hand alter Rohstoffvölker, welche zuerst als »Störer«, dann als einzelne ansässige Fremdbürtige, ihre Kunst anbieten, verbliebenen Gewerbe zur Bindung an Pariakasten verurteilt und auch die Manipulationen des Handwerkers, seine Technik, magisch stereotypiert.

折原訳
古来より原材料を所有し、当初には「旅回りの職人(シュテーラー)[注]」 として、やがては[定住農民の「庭畑地」に住居を与えられて]定住する異郷者として、各人の技を定住民に提供する、そういう「(客人)原料民」に掌握されたままの生業が、パーリア・カーストの専業に拘束されたり、職人の所作やかれの技術が魔術としてステロ化されたりするのも、主としてこうした事情からである。

注釈: 自分の仕事場ではなく、顧客の家に赴いて働くことによって、ツンフトの秩序を「かき乱すstören」者。

丸山訳
そして特に古来からの特定の原材料を供給することを生業とする諸部族、その者達はまず第一に「放浪職人[注]」として、次には個々に住み着いた異邦人として、その技芸を提供し、定住の上での生業がパーリアのカーストに結び付けられ卑賤民の仕事と見なされ、また職人一般の扱いとしても、その技術も、呪術的なものというステレオタイプな偏見を持たれるのである。

注釈: 原語はStörerで元々の意味は「(外部からやって来て)既成の秩序をかき乱す存在」ということ。ここの記述はこの語も含めて特にディアスポラのユダヤ人を想定して考えると分かりやすい。また古代ギリシアのポリスでのメトイコイ(μέτοικοι)の成立事情の説明ともなっている。

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折原訳・注の問題点
(1)古代の初期キリスト教徒の話をして、「都市の職人」を論じているにもかかわらず、「定住農民の「庭畑地」に住居を与えられて」と農村の話にしてしまっている。
(2)「そういう「(客人)原料民」に掌握されたままの生業が、パーリア・カーストの専業に拘束されたり」が意味不明。
(3)注釈のツンフトの秩序以下も意味不明。そもそも中世の話ではないし、またツンフト(ギルド)は遍歴職人をむしろ制度化していた。また「顧客の家に赴いて働く」も意味不明。
(4)ここはほぼキリスト教初期のギリシアの都市においてのメトイコイ(移住外国人)の話であることがまったく分かっていない。

要するにここでもヴェーバーの歴史についての研究の背景がまったく理解されていないということです。メトイコイは「ローマ土地制度史」にも出て来ます。