「中世合名・合資会社成立史」のAmazonでのKindle版に付けた説明

Amazonで「中世合名・合資会社成立史」のKindle版につけた紹介文です。この程度でも今までこの論文の内容を的確に説明したものは無かったと思います。

「マックス・ヴェーバーの博士号論文(正確には元々の博士号論文は本論考の第三章のみで他は後から付け加えられたもの)で実質的な学者としての業績のスタートであるZur Geschichte der Handelsgesellschaften im Mittelalter(1889年)の最初の日本語訳です。古典ラテン語、俗(中世)ラテン語、初期イタリア語、初期スペイン語、中低ドイツ語等々で書かれている中世の法規史料の引用部(本文中、注釈中とも)についても全て日本語に訳している完全翻訳です。ヴェーバーが中世の北イタリアの沿岸都市において地中海貿易・中東貿易での危険分担と利益の分割の必要性から生まれて来たコムメンダやソキエタス・マリスといったある種の新しい経済団体や、フィレンツェやピアチェンツァなどの内陸都市で盛んだった手工業における家計・労働ゲマインシャフトが、元々のローマ法のソキエタス(組合)の延長としての解釈を超えて、最終的に合名会社や合資会社という新しいゲゼルシャフトとして法制度の中で定義されるまで、どのように発展し確立していくかという過程を、会社の特別財産と連帯責任と商号の成立という3つの観点で実証的に分析したものです。この論文に出て来るコムメンダやソキエタス・マリス、海事利息等は教会法で禁じられていた利子付き金銭貸借を回避する手段についての議論の中で「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の中でも言及されていますし、またゲマインシャフトを基礎としそこに契約を契機としてゲゼルシャフトが新たに生成される過程は、後の「理解社会学のカテゴリー」でゲゼルシャフトはゲマインシャフトの特別な場合であるという議論にもつながり、ヴェーバーの学問像全体の研究においては必読の論文です。」