折原誤訳の(ここまでの)総括

ChatGPT5に折原誤訳の特徴をまとめさせると
「折原訳の問題は、個別の誤訳の多さにあるのではない。強い先入見、独断的な理論枠組み、語彙理解の欠如、文法把握の甘さ、既訳依存、歴史的無知が相互に増幅しあって、訳文全体を恒常的に歪めているところにある。」
となりました。

以下、10ほど例を再度挙げます。どの一つをとってもまともな翻訳ならあってはならないものですが、折原訳ではこれらが複合して登場します。こういう方が「翻訳の責任倫理」について語る資格はありません。まずは自分の翻訳責任をきちんと果たしてからにして欲しいと言いたいです。
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折原浩誤訳パターン集

(1)不適切な訳注
まずは誤訳ではないが、マルクス主義バリバリの本文とほとんど関係のないおかしな訳注を付ける。(ちゃんとした訳注はほとんど付けていないにもかかわらず。)

「古代には一般に都市に在住する領主」への訳注→「零細農民を債務奴隷に陥れ、土地を収奪-集積して大地主になると同時に、都市に在住して遠隔地交易にも携わり、その利得を農民に高利で貸し付けて収奪-兼併を強める都市貴族・不在地主層。」

(2)Gemeindeに関する独自の珍解釈
ヴェーバーはGemeindeに関しては「理解社会学のカテゴリー」でも「社会学の根本概念」でも一度も言及していないにもかかわらず、「このように、「ゲマインデ」の三範疇は、「旧稿」内部で、あちこちに分散し、バラバラに論じられているようにも見えますが、じつはそうではなく、カテゴリー論文に特有の「ゲゼルシャフト結成」概念によって結びつけられています。」とし、創文社訳がStadtgemeindeを「都市教団」と正しく訳しているのに対し「都市ゲマインデ」と訳すべきと主張し、このことを理由に創文社訳が翻訳の体を成していないと非難しています。しかし、ゲマインデは地方自治体という意味でも、宗教的な共同体という意味でも元々ゲマインシャフトから出発していて、ゲマインシャフトの意味とゲゼルシャフトの意味との両方を持つ語であり、「ゲゼルシャフト化されたものがゲマインデ」などというのは完全な誤り。

(3)「理解社会学のカテゴリー」にこだわり、時にはそれに書いていない独自の珍解釈を行う
の問題点
「宗教社会学」のゲマインデ(教団)の宗教性について定義している箇所ですが、

原文
Wir wollen nur da von ihrem Bestand reden, wo die Laien 1. zu einem dauernden Gemeinschaftshandeln vergesellschaftet sind, auf dessen Ablauf sie 2. irgendwie auch aktiv einwirken.

折原訳
われわれはもっぱら、平信徒が、① ゲゼルシャフト形成によって[スタッフと平信徒、相互の権利-義務を規定する秩序の制定によって、この秩序に準拠する]継続的なゲマインシャフト行為に編成され、同時にまた、②当のゲマインシャフト行為の経過に、なんらかの仕方で能動的にもはたらきかけている場合にかぎって、ゲマインデ宗教性が存立すると考えたい。

丸山訳
我々はもっぱら、平信徒が、① 単発のゲマインシャフト行為ではなくそれが継続的に[何らかの制定律に準拠しているかのように]繰り返されるという形でゲゼルシャフト化されているという場合で 、そしてその経過において、②そういった連続したゲマインシャフト行為が何らかの形で能動的に作用している場合に、ゲマインデの宗教性が成立していると考えたい。

私の訳で普通に自然に訳せるのに、「ゲゼルシャフト形成によって、この秩序に準拠する継続的なゲマインシャフト行為に編成され」という、ゲゼルシャフト形成がゲマインシャフト行為を編成するという、カテゴリー論文に書いていないことを勝手にでっち上げています。

(4)「理解社会学のカテゴリー」に書いていない社会学的概念は誤訳だらけ
ケルパーシャフトは「理解社会学のカテゴリー」には出て来ないものの、ドイツの団体形成の歴史では重要な概念ですが、折原はGebietskörperschaftsを「地域団体」と訳して終わりです。これではゲマインデとケルパーシャフトの違いがまったく分かりません。他にもゲノッセンシャフトを「仲間団体」と訳して終わり。この訳だとGenossenschaftsverband(ゲノッセンシャフト団体)を訳すと「仲間団体団体」になって破綻します。

(5)創文社訳を批判しつつ、一方では創文社訳のおかしな訳をそのまま踏襲。
Die charismatische Erziehung in diesem Sinn, mit ihren Noviziaten, Mutproben, Torturen, Graden der Weihe und Würde, ihrer Jünglingsweihe und Wehrhaftmachung ist eine in Rudimenten fast überall erhaltene universelle Institution aller kriegerischen Vergesellschaftung.

折原訳(前半部は創文社訳そのまま)
この意味におけるカリスマ教育は、修練期・肝試し・しごき・聖祓と威厳の格付け・元服式・佩刀礼をともなう、戦士的ゲゼルシャフト結成の普遍的制度で、ほとんどいたるところに痕跡を止めている。

丸山訳
この意味でのカリスマ的教育は、修練期・勇気の試練・苦行・聖別(注)と位階の格付け・[通過儀礼としての]成年式および武装の許可を伴うものであり、ほとんどすべての戦士的ゲゼルシャフトとして形成された集団において、痕跡的ながら普遍的に認められる制度である。

「修練期・肝試し・しごき・聖祓と威厳の格付け・元服式・佩刀礼」などとほぼ全て日本の用語に直した訳は元の語の意味を歪めてしまいますが、折原はそのまま踏襲しています。

(6)辞書を見たり、調査しないで間違った訳語を濫発
Surrogate(代替物)をスローガン、 erastianisch(エラストゥス主義)をエラスムス的、などぱっと見の印象での不正確極まる訳が目立ちます。imperialistisch(帝国主義的)が何故か「知性主義的」に。entlehnen(借りる)を「拒否する」に。

(7)奇妙な造語的訳語の濫発
persönlichを多くのところで「即人的」と訳し、それについての説明もなし。またAblenkungを「貶価」などという辞書にもない造語で訳している。

(8)勝手に元のnichtを落としたり、oderをundに変える
Soweit diese Gruppe sich nicht in den Dienst der Bildung der Reformations→「人文主義者の集群は、改革派教会あるいは対抗改革派の宗教性の形成に関与したかぎりで」と正反対に訳している。
また、Versklavung oder Proletarisierung で「または」とあるのを勝手に「奴隷化されると同時に無産化された。」と誤訳。(ローマで奴隷化と無産市民化が同時に起きることはあり得ない。)

(9)仏教用語の多用
開悟だの、彼岸・此岸、応報等々、仏教以外のことについて書かれている箇所で仏教用語を多用。

(10) 歴史的事実のねじ曲げ
旧約聖書の「申命記」について、ヴェーバーがOktroyierung(王による上からの強制)と書いているのを何と「欽定訳」と訳す。