ここは折原訳の間違いというより、創文社訳とその訳注が間違っているのですが、少なくともカトリックでは避妊は禁じられているので、「子供は二人まで」が敬虔なカトリック教徒に遵守されているなどという訳は噴飯ものです。それに Hintanhaltungは「遵守」の逆の「遅らせること・妨げること」という意味です。ヴェーバーの言っていることとまったく反対の訳になってしまっています。そもそも中国が長らく「一人っ子政策」を取っていたのは有名ですが、欧州の国で優生政策以外で産児制限を設けた国はなかったと思います。その意味でも「二児制」などと訳すのは問題です。
原文
Dennoch ist z.B. etwa in der fühlbaren Hintanhaltung des Zweikindersystems bei frommen Katholiken die Beichteinwirkung noch heute zuweilen »ziffernmäßig« greifbar, so sehr sich in Frankreich die Schranken der kirchlichen Macht auch hierin zeigen.
折原訳
それにもかかわらず、たとえば敬虔なカトリック教徒の間で、二児制が建前にとどまらずじっさいにも遵守されている事例のように、告解の影響は、今日もなお時として「統計の数値によって」捉えられるほどである。ただし、フランスでは、この点にかけても、教会の力の限界が、明らかに示されている。
丸山訳
とはいっても、例えば敬虔なカトリック教徒によって、「子供は二人まで」というやり方がはっきり分かるほど阻止されている[1] ことに見られるように、告解の作用は今日でも時折「統計数字によって」把握可能なのであり、しかしフランスでは教会の力の限界がこの点においても現れている。
[1] カトリックでは原則的に避妊は禁止で、産児制限というのは教義に完全に反する考え方である。しかし、特にフランスでは、フランス革命以後、「世俗的かつ宗教的権威に対する反逆の運動」として、既に1750年頃から自発的な出産制限が始まっており、そのことを指していると思われる。参考:深澤敦、立命館産業社会論集、2014年12月、「フランスにおける人口問題と家族政策の歴史的展開─第一次世界大戦前を中心として─(上)」。この動きもあって20世紀初頭にはフランスの出生率は2を割って少子化社会・人口減となっており、その頃からフランスは逆に出産奨励政策に転じている。またイギリスなどでも貧困を避けるためには科学的な産児数管理を行うべきだという主張が19世紀初頭にされている。(新マルサス主義)この主義を標榜する団体はドイツにも作られている。またサンガー夫人がアメリカで家族計画のパンフレットを出したのが1914年であり、こういった産児制限は当時の最新のトピックだった。