以前、安藤英治氏の「ウェーバー歴史社会学の出立」におけるこの「中世合名会社史」に関する言及を紹介しました。
日本語訳の第41回目を公開して、終わりにも近付いたのでその内容を再度読んでみたのですが、残念ながら色々と誤読されているようです。特に致命的な誤りは今回の日本語訳の所に出て来る、corpo della compagnia を動産の内で資本金に含まれないものを言い、それがヴェーバーの言う「ソキエタスの特別財産」だとされていますが、これは完全な誤りであり、corpo della compagnia は今回の日本語訳を読んでいただければ分りますが、出資された投資金額の合計=資本金のことです。現在でも貸借対照表の資産の部は資本と借入金の合計ですが、会社の実体を示すものは資本金であり、借入金では無いのは言うまでもありません。また、資本金のように一定期間の取り戻しや増額や減額が簡単に出来ないものこそ、「特別財産」と呼ぶにふさわしいもので、いつでも取り戻せる貸付金なら、それはローマ法のソキエタスの各成員の持ち寄り財産と何ら変りません。
どうしてこういう誤読が生じたかですが、引用されている箇所を見る限り、全文を読まれたのではなく、各章のErgebnis(成果)の所だけを読まれたのだと思います。
大塚久雄氏も決してこの論文をちゃんと読んでいないということは何度も言っておりますが、要するに日本人学者でこれまでこの論文をきちんと通して読んだ人は一人もいない、ということだと思います。