IV. Pisa. Societätsrecht des Constitutum Usus. P.266 – 270 日本語訳(32)

日本語訳の第32回目です。これで訳し終わった箇所が2/3を超えました。
ヴェーバーはコムメンダやソキエタス・マリスの発達は教会法の利子禁止原理の回避が主目的ではないとしますが、もしコムメンダがイスラム圏でのムダーラバ契約の影響を受けて出来たものであれば、それはまさにイスラム教での利子禁止に抵触しない方式として考案されたのであり、ある意味議論が根本的に変ってきます。
また「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」に出て来る、教会法の利子禁止原理と資本主義の発達との関連についてのゾムバルトへの反論の中で言及されている海事利息制度(大塚訳では海上貸借)、コムメンダ(大塚訳はコンメンダ)、ソキエタス・マリス、dare ad proficuum de mari は全てこの「中世合名会社史」の中で扱われています。
ちなみに先日訳者としての大塚久雄の姿勢を批判しましたが、同じ批判を英訳者のLutz Kaelber氏に対しても行います。今回の箇所に出て来る”foenus nauticam”は、最初は第2章の冒頭に登場します。しかしKaelber氏は”foenus nauticam”をそのまま引用しただけで、英語に訳すことも訳者注を付けることもしていません。今回の箇所にSeedarlehenという単語が登場しますが、実はこれは”foenus nauticam”をドイツ語にしたものです。(ここを参照。)Kaelber氏はその訳を”the ocean loan”と、何だか一般的な貿易への資金貸付けのように訳しています。読者はこの訳では何故それが教会法の利子禁止原理と関連するのかがまったく理解出来ません。自分にとって分らないことを調べずに放置してそのまま引用することが、結局他の箇所でも翻訳の質を低下させることにつながります。
それからまた、そもそもこの論考を翻訳するきっかけになったのは、この論考にRentenkaufが登場することなのですが、どういう文脈で扱われたのか、ようやく理解出来ました。
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 ここにおいての《henticaが形成されるケースとこのad portandum in compagniaとの》本質的な違いは次のような点にあると考えられる。つまり、ここでの出資は技術的な意味でhenticaとして取り扱われず、従ってまた法規においても、henticaとソキエタス・マリスについては債務に関わる人間関係についての明確な規定の中では言及されていない。そのためにここではゲゼルシャフトの財産が成立したようにはまったく思えず、そのためにこの形態をソキエタス・マリスと違うものとして扱う場合は、あたかも商法典においての「匿名」組合と合資会社の中間に位置付けられるものとして考えることが出来るかもしれない。ゲゼルシャフトの財産を持った合資会社は疑い無く法学的にはより上位の形態である。もしラスティヒが participatio 《参加する》という動詞によってこうした人間関係を理解しようとしているのであれば、それは確かに意義のあることと考えても良いであろう。その participatio という概念においては、ただ債務という考え方だけを扱い、その業務への参加者の間で維持されている利益と損失の分担を特別財産の形成とは見なさず扱うのであり、それはソキエタス・マリスとは対置される性格のものであると考えられる。―こうした見解は法学的なものであり、資本と労働がどのように結合されているかということについて、それぞれの単なる経済的な差異を抜き出して描写しようとしているのではないだろう。

 こういった固有財産を持つソキエタスと持たないソキエタスの違いというものは、しかしながら当初から存在していた訳ではない。―我々はその違いについてはジェノアの例においては、ただ曖昧にまた間接的に認識することが出来ただけである。その2つの違いが明確になるにはようやく次のような時点からである。それは根源的には現金取引の中で利用されていたコムメンダとソキエタス・マリスという制度が、外部に対して債権-債務の関係を明確に示す必要性が生じた時で、それは特に海外との商取引においてもより大規模な信用取引が行われるようになった場合である。ジェノアにおいてはただソキエタスの財産形成についての非常に萌芽的な諸契機を見出すことが出来ただけである。その財産形成についての法的な取り扱いという意味では、ピサにおける法規の編纂者達のより高度の水準にある法学的技術が、既に見て来たようにかなり早い段階でそれ以上の成功を収めていた。

 これまで論じて来たことからジルバーシュミットがコムメンダの中に合資会社の、そしてソキエタス・マリスの中に合名会社の、それぞれの始まりを見出そうとするアプローチは正しくないと思われる。ソキエタス・マリスはむしろ逆に合資会社の基礎原理なのであり、コムメンダはしかし、それが一方向的な関係に留まる限りにおいては、単純な参加型の関係という形でのみ発展する傾向を持っており、固有の制度としては最終的には消え去ってしまった。それはConsitutum Ususの中では既に見て来たように、datio(dare) ad portandum in compagniam の所である意味相当程度継母ままははのように扱われていた。

 今述べた最後のことを明らかにし、そして同時に我々の見解が正しいということについてのさらなる証拠は次の所で提供される。つまり、まずはコムメンダが取り入れられている法規の該当部分においてであり、さらにはコムメンダがその形を変えていくその方向によって、そしてまたConsitutum Ususの中でより単純化された信用取引の受け入れという方向にさらに進んでいく取引における人間関係についての規定を通じて提供される。その人間関係は dare ad proficuum de mari という名称で詳細に規定されている。

III. 固定配当金を持ったソキエタス(Dare ad proficuum maris)

 この dare ad proficuum maris もまた、文献史料によれば、ある種の”accipere havere ad proficuum de mari in aliquo tassedio ad tractandum in hentica”(共同出資によるソキエタス{hentica}の商品をどこか航海に出てそれを{海外で}販売し、それによって利益を得ようとする意図に基づくソキエタスへの参加の受け入れ)である。この表現から、コムメンダがこの制度の歴史的な土台であることが良く分る。その他また数多い煩瑣な形式的な疑問に答える完全に統一された諸規定から分ることは、もし何らかの理由でここで通常の利益分割のやり方が採用されない場合には、補完的に使われていた契約法(lex contractus)の規定である1/4の利益配分にまた戻ってしまうということである。(その1/4の利益は、例えば契約違反の場合の違約金として支払わなければならないものである。”ac si re vera socius esset”{そしてもしその者が何か正当な手段によってソキエタスの成員であるだろうとされるならば。})この人間関係については、それ以外の点では対外的にその祖先であるコムメンダとの類似点がほとんど見つからない。例えば出資に関してはピサでは、商慣習として固定化された利益の内の最大の取り分についての料金表が作られていて、その%で示された値は仕向先の港の位置する場所によって異なっていた 21)。これらの法文の規定は、企業家側からすれば「資本の調達コスト」として支払わなければならないものであり、根源的には常のこととして、(そうした資本調達コストを負担する前提で)利益を事業によって得ようとするものであった。利益が想定より少ないかあるいは全く無いという事態が―何らかの責任を負う必要がないこと(例えば不可抗力)が原因で―生じてそれが通知されることにより、ある決まった規則によって支払い利益の割引が発生する。また払い込まれた資本の全額の償還の際にも、臨時の減額の通知によって、元本割れの金額の返却という事例も見られた。この制度は海事利息制度《第2章の冒頭で言及されているfoenus nauticamのこと。そちらの訳注を参照。》とソキエタスの中間に位置付けられるが、しかし私はSchröder 22)《Richard Schröder、1838~1917年、ハイデルベルク大学の法制史家・商法学者》の説である海事利息制度の変形であるとは考えず、むしろ海事利息制度の法規定の中に取り入れられている法文によって変形された出資ソキエタス、コムメンダの特別なケースであると考える。―その「特別なケース」とは以下のようなケースである:その形成にあたっては、西地中海の沿岸に位置する全ての港を仕向地として完全に分類して算出した取引のリスクとさらにそこから派生する保証(のコスト)から、その(貿易)業務において平均してどの程度の計算可能な収益が得られるかということを明らかにする、そういうケースである。またそういう取り決めの目的は明らかに、信用取引の引き受けが主眼ではなく、利益の分割の仕方である。

21)Consitutum Usus c. 25: constitutio de prode maris を参照。

22)Endemann編の Handbuch des deutschen Handels-, See-, und Wechselrechts の第4巻の§ 46、Wagner《Rudolf Wagner、1851~1885年、ドイツ-ラトビアの法学者》のHandbuch des SeerechtsのIのp. 25のNo. 61、ゴルトシュミット(Festgabe für Beseler p. 204)は全てこの制度をゲゼルシャフト的に変形された海事利息制度としている。私は文献テキストトの中で探そうとした海事利息制度のコムメンダへの歴史的な依存という仮説を、そのコムメンダについては根本原理としては応急的なものとして登場したと考えるべきであるとする文章への言及を考慮し、少なくとも債権-債務関係の形成という点では正当であると考えたい。

 こうした業務の細かい点については、我々の関心の範囲外である。我々がここに見出すのは、先に述べた参加型業務がはっきりとより広範囲に行われるようになったということであり、それは料金表に記載されたそれぞれの港湾との増大する定期的な取引より生じた。そうした参加型の業務はそれぞれの港湾との貿易での固定化された利益配当を可能にしたのである。というのもいまや、既に述べて来たように、これらの関係も―その取り扱いについてはソキエタス・マリスと関連し、―またコムメンダを継承するものとして登場しているため、我々はここでまた、ラスティヒの言う所の一方向的な労働ゲマインシャフトと同じく一方向的な資本ゲゼルシャフトの対立が、こうした貿易業務の発展においての決定的な契機ではなかったことを見出すのである。

 ”dare ad proficuum de mari “の形の制度は後に消滅してしまっている。法典の補遺においては、固定化された利益と引き換えの資本提供を禁止しており、Consitutum Ususの中の該当の章は破棄され、”usura”が先頭に付く名前の章はこの業務形態を別のより害のないものに置き換えている。

ソキエタス法に対する利子禁止原理

 この機会に手短に次の見解についての議論に立ち入っても良いであろう。その見解とは中世における諸ソキエタスの発展を教会法での利子禁止原理の方へ本質において引き戻そうとするものであり、特にEndemannがそういう立場である 23)。この見解では次のことが仮定されている。つまり当時の教会法の教義において、ソキエタスを「営利活動」(pecunia-opera)と把握し、それの一つであるコムメンダ関係について、その本来の構造を本質的に次のことから把握している。つまりそれは資本が教会法によっての利子禁止の制限を何とかかいくぐって利子(収益)を得ようとするする形態であると。それ故にある人間関係について考慮する場合、もしそれが経済的には明らかに一定の利息の受け取りを条件とした資金貸付けとして登場するのであれば、それは(教会法では営利を目的とする)ソキエタスと見なされるのである。―次のことは既に知られている。この時代の人間が地代徴収権購入《Rentankauf、ある土地の所有者から土地そのものを買うのではなく、その土地の利用者に対して発生する年間いくらという地代{Rente}の徴収権を購入するもの。毎年受け取る地代が支払った金額に対する利子のように機能するが、貸付けではなくあくまで売買であるため、教会法の利子禁止原理の制限を免れた。》に似たやり方で抵当権上の保証が付いたヴェールに隠された利子付き貸付けをどのように行おうとしていたのかを説明しようとするのであるが、しかしこのような把握の仕方はその後断念されたと見なし得るのである。アーノルド《Wilhelm Christoph Friedlich Arnold、1826~1883年、ドイツの法律家・歴史家・政治家》等の研究は次のことを明らかにした。地代徴収権購入は次第に(資金提供者から地主への)貸付けの関係から諸都市における土地所有権(の代用)として発展し、そしてそれは全くの自明のことである経済的な要求を充たすものであったが、しかしながら利子付き貸付けが出来ないことに対する代替品としては主要なものでは全く無かった。―それがまた後になって、その制度が独立して発展した後になってようやく、投資先を求める資本が利子付きの抵当権設定という形態が欠けていることに対しての代替品として利用されたとしてもである。ソキエタス的な関係に関して言えば、これまで述べたことから十二分に次のことを確認することが出来る。つまりここにおいても(ソキエタスの)法学的かつ経済的な発展は(教会法の利子禁止原理をかいくぐる手段としてよりも)独立に発生したということである。(この段落続く)

23)Studien zur romanisch-kanonischen Wirtschafts- und Rechtslehre を参照。―それに対するラスティヒの反論は引用済みの論文を参照せよ。

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