“comperae”の訳について、英訳の間違いと全集版の注釈の不十分な説明

今訳している所で、英訳及び全集版の注釈について、誤訳と不十分な説明の箇所を見つけました。

原文は全集版のP.279の10行目~12行目です。
Für die von einem Teilhaber auf eigene Rechnung abgeschlossenen comperae haben die anderen ein Eintrittsrecht (nach Art der heutigen offenen Handelsgesellschaft).
(ある構成員によってその構成員の会計中で締結されたcomperaeについては、他の構成員は介入権を保持する。(今日の合名会社でのやり方と同じ))

問題は”comperae”という中世ラテン語です。
Lutz Kaelber氏の英訳では、P.144で”comperae [sales]”としています。

これに対し全集版の注釈では、”Erwerbung durch Kauf. Weber übernimmt den Quellenbegriff des Constitutum Usus.”(購買の業務。ヴェーバーはConsitutum Ususの中の概念を使っている。)となっています。

つまり、英訳はここを「販売」と訳し、全集版の注釈は「購買」と訳しています。

まずは英訳についてはKaelber教授に問い合わせ中ですが、返事が来るかどうか不明です。
(ちなみにようやく今日になって2月に送ったメールの返事が来ました。)
しかし、comperaeという中世ラテン語は、おそらく現代のイタリア語ではcompraであり(伊和辞書にcompera→compraとあります)、その意味は「買う」です。故に全集版の「購買の業務」の方が正しいと思います。

しかし、問題は単なる「購買」なら、わざわざ法規の方で特別な名前を付ける必要があるのか、という疑問が湧きます。実際にこのすぐ前では、「構成員が自分の勘定の中で業務を行う限り、他の構成員はゲマインシャフトを脱退しない限りそれを阻止することは出来なかった」とありますので、このcomperaeに対してだけ何故 Eintrittsrecht (介入権)を行使してそれを阻止出来るのかが不明です。またヴェーバーはその阻止の行為は今日の合名会社でも同じと言っていますが、通常業務の中の個々の購買行為を他の無限責任社員が一々介入して阻止するというのは聞いたことがありません。更には単純な購買については次の3)で述べられていますので(個々の構成員のBedüfnis=需要、という形で)、ますますここで単なる購買行為に言及するのはおかしいです。それから、Consitutum Ususの概念をヴェーバーが使っているという全集版の注釈は、それなら何故ヴェーバーが該当のページを注釈として入れていないのかという疑問があります。(他の場所ではほとんど注釈があります。)全集版の編者もConsitutum Ususにおける具体的な場所を記載しておらず、私見ですがここは単なる推定で書いているとしか思えません。

実は compera(comperaeは複数形)には特殊な意味があります。

永沼博道著、中世ジェノヴァ植民活動の特質 : マオーナ・ディ・キオの事例によせて、関西大学学術リポジトリ、https://nkk001-my.sharepoint.com/personal/tmaruyama_nkkswitches_co_jp/Documents/Weber/%E4%B8%AD%E4%B8%96%E5%90%88%E5%90%8D%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E5%8F%B2/KU-1100-19930127-07.pdf
の一部を下記に引用します。

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12世紀以降ジェノヴァ共和国は,きわめて緊急を要する出費のために市民に自発的な融資を募った。融資に応じた市民は,国家の歳入となる間接税の一部を融資した期間権利として買うことになる。期間が終了した後,国家は債務の全てを払い戻す。そうして市民は,都市国家当局に対して優位に立つ目的で融資者組合を結成した。こうした団体は,前払いした金額の見返りに,本来国家に帰すぺき租税,各種間接税,税関からの収入を受け取った。1149年共和国は度量衡税を売った。同様に入港税, 通行税, 塩税などの間接税が売り出される。団体は自らのリスクにおいて歳入の管理を肩代わりし,こうした公債はコンペラ(買ったものを意味する)と呼ばれた。コンペラは, 100リラ単位の公債証書(locumすなわちluogo)の形に分割され取引の対象となった。またコンペラを購入した私的団体もまたコンペラと呼ばれた 27)。
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実はこの「コンペラ」は一種のRentenkaufであると考えられます。金を貸してその利子を取る代わりに、何かの税からの収入を定期的に得ることが出来るからです。
ヴェーバーはこのコンペラについて、「古代農業事情」の中で、「11・12世紀のジェノヴァや13・14世紀のフィレンツェでRentenkaufを使った国債の発行があった」という形で言及しています。(この項の最後に原文を引用します。)

ピサのConsitutum Ususの成立の前に、ジェノヴァでのコンペラは始まっています。どこまでピサでコンペラに類することが行われたか未調査(現在BonainiのConsitutum Ususの本 {Statuti inediti della città di Pisa} を取り寄せ中ですが、新型コロナウイルスの影響で海外からの配送に時間がかかっており未着です)ですが、ヴェーバーがここでこのコンペラを使っているとすれば、これはソキエタスの単なる購買の行為ではなく、ソキエタスが他のソキエタスや国に金を貸し、その代償として定期的な収入を受け取るというRentenkauf的な契約をすると解釈するのが一番自然で明証的と思います。そうであれば他の無限責任社員が介入してそれを阻止するというケースも十分考えられます。仮にRentenkaufで無いとしても、いずれにせよ単純な購買行為とは区別される何か特別な購買と考えるべきです。

英訳はこの辺りの事情をまったく理解していない間違った英訳を付けていますし、全集版の注釈も「購買」という意味にしたのは間違っていませんが、まったく突っ込み不足で、きちんとこの語が使われた背景まで説明していません。

(「古代社会経済史 古代農業事情」での中世イタリアのRentenkaufを使った国債への言及の箇所)
Aber jeder Blick z.B. in die Urkunden von Genua vom 11. und 12. Jahrh. an, und vollends in die Bücher der Florentiner Kaufleute des 13. und 14. Jahrh. zeigt nicht nur die Überlegenheit der Geldverkehrstechnik, sondern auch die größere Sättigung der Wirtschaft mit »Kapital« damals gegenüber der Antike. Wo z.B. die mittelalterliche Entwicklung von der Belastung der besitzenden Klassen in Notlagen der Stadt durch zinslose Zwangsanleihen zur Ausbeutung der Notlage der Stadt seitens der Besitzenden in Form von Emissionen von Anteilen an der zins- resp. dividendetragenden Staatsschuld und weiter zur Staatsanleihe in Form des Rentenkaufs fortschreitet, da steht auf hellenistischer Seite, als Notmittel neben der Vermögenssteuer, die Anleihe unter Verpfändung der Burg (Lampsakos), der Gemeindewiesen (Orchomenos), nur gelegentlich: der Zölle (Knidos), dagegen einmal des gesamten öffentlichen und Privatvermögens und außerdem noch die persönliche Haftung der Schatzmeister (Arkesine) an die einzelnen Gläubiger der Stadt.

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