折原浩先生訳の問題点(6)

折原先生の「古代には一般に都市に在住する領主」に珍しく付けている訳注が:

「零細農民を債務奴隷に陥れ、土地を収奪-集積して大地主になると同時に、都市に在住して遠隔地交易にも携わり、その利得を農民に高利で貸し付けて収奪-兼併を強める都市貴族・不在地主層。」

何ですかこのバリバリのマルクス主義注釈は。ほとんど昔のマルクス主義者の常套語のつなぎ合わせで、しかも「零細農民を債務奴隷に陥れ」と「その利得を農民に高利で貸し付けて」と同じことを2回も言っています。折原センセ、ちゃんと「ローマ土地制度史」を読んでください!(笑)要するにこれは例えばローマで都市に在住した貴族が地方に土地を持ち、その管理は管理人にやらせて自分は都市に住み続けて地代だけを受け取っていた、というだけです。どっから農民に高利で貸し付けとか遠隔地交易にも携わり、とか出て来るんでしょうか。(大体、貸金で稼ぐなら都市でのんびり不在地主でいるなど不可能。)

更には”Versklavung oder Proletarisierung”と「または」とあるのを勝手に「奴隷化されると同時に無産化された。」と訳しています。古代ローマで奴隷と無産市民はまったく別の階層でそれが同時に起きることはあり得ません。

そもそも土地代=レンテで生活する地主というのは中世のオイコス経営につながり、近代的経営と対比されるヴェーバーの中でも重要概念です。それをこんな俗流マルクス主義テンプレートで置き換えてしまうなど、申し訳ありませんが、ヴェーバーの研究者としては失格です。

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