浜島朗の「権力と支配」の版の違いについて

現在講談社学術文庫で入手出来る浜島朗(濱嶋朗)氏の「権力と支配」は、ヴェーバーの「経済と社会」の中の支配の諸類型他の日本語訳です。この翻訳には実は3つの版があります。

(1)1954年、みすず書房版
(2)1967年、有斐閣(書名が「権力と支配 : 政治社会学入門」に変更)
(3)2012年、講談社学術文庫(書名が「権力と支配」に戻る。)

実は、(1)→(2)の時に、構成に大きな変更があり、みすず書房版が第二部は「支配の諸類型」だったのが、有斐閣版以降はその中の「官僚制」を残して後は削除されています。
現行の版の内容は、創文社の世良晃志郎さんの訳とすべてかぶっていますので、現在では正直な所日本語訳としてあまり価値は高くありません。むしろみすず書房版の第二部が、現在これ以外では日本語訳が無いため貴重です。私はみすず書房版をamazonのマーケットプレイスで買えましたが、「日本の古本屋」サイトでは検索しても出てきませんでした。

参考までに現行の版とみすず書房版の章構成を引用しておきます。
(みすず書房版に入っている「社会主義」は講演であり、「経済と社会」には含まれていません。)なお、この翻訳は全集第3版に基づくもので、有斐閣版、講談社学術文庫版もそのままです。

現行版(講談社学術文庫版)

第一部 権力と支配
 第一章 正当性の妥当
 第二章 官僚制的行政幹部をそなえた合法的支配
 第三章 伝統的支配
 第四章 カリスマ的支配
 第五章 カリスマの日常化
 第六章 封建制
 第七章 カリスマの没支配的意味転換
 第八章 合議制と権力分立
 第九章 政党
 第十一章 代表
 第十二章 身分と階級       

第二部 官僚制
 1 官僚制の特徴
 2 官僚の地位
 3 官僚制化の前提と根拠
 4 官僚制機構の永続的性格
 5 官僚制化の経済的および社会的帰結
 6 官僚制の権力的地位
 7 官僚制の発展段階
 8 教養と教育の「合理化」

みすず書房版(初版)
第一部 支配の諸類型
一 正當性の妥當
二 官僚制的行政幹部をそなえた合法的支配
三 傳統的支配
四 カリスマ的支配
五 カリスマの日常化
六 封建制
七 カリスマの沒支配的意味轉換
八 合議制と權力分立
九 政黨
十 沒支配的團體行政と代議政治
十一 代表
十二 身分と階級

第二部 支配の諸類型
第一章 支配
第二章 政治共同體
第三章 勢力形象。「國民」
第四章 階級、身分、黨派
第五章 正當
第六章 官僚制

附錄 社會主義

 

 

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