折原浩訳の問題点(94)

ここでは、ヴェーバーはVerpönt ist (忌むべきは、斥けられるべきは)で始まる文を5回繰り返しています。これは明らかに山上の垂訓の Selig sind…(幸いなるかな、~の者は)などの文体模写(パスティーシュ)です。なので余計な接続詞や、第一に、第二に、などを付けずに、「忌むべきは、…」で統一して訳すべきと思います。それに個人への倫理的な戒告なので「厳禁される」も合っていない訳だと思います。

それからここでのGewaltは明らかに暴力であって、「個々人の権力行使」って意味不明です。ここでは明らかに私的復讐禁止の話ですから。それから久し振りに「即人的」が復活しました。この前の文章でsachlichと「即物的」と訳しているので、これでこの語の折原訳における位置付けが分かりました。

原文
Verpönt ist Gewalt des Einzelnen gegen Menschen, aus Leidenschaft oder Rachsucht, überhaupt aus persönlichen Motiven — gottgewollt aber die rationale Niederhaltung und Züchtigung der Sünde und Widerspenstigkeit im zweckvoll geordneten Staate.

折原訳
第四に、他人にたいする個々人の権力行使は、激情からであれ、復讐欲からであれ、およそ即人的な動機に発するかぎり、厳禁される。とはいえ、合目的的に秩序づけられた国家において、罪と反抗を合理的に禁圧し懲戒することは、やはり神意に適う処置である。

丸山訳
忌むべきは、個々の者の他人に対しての暴力であり、激情からであれ、復讐が目的であれ、また一般的に個人的な動機によるものであれ--しかし合目的な制度を備えた国家における、犯罪と反抗の合理的な抑圧は神意に適うものである。

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