折原浩訳の問題点(93)

今日は小ネタだけかと思いきや、ここは明確な誤訳。
die sie umbrandetは動詞が単数形なので、主語はDurchschnittsmenschen(平均的人間)ではなく、die Welt。
umbranden がちょっと分かりにくいのですが、brandenが「波が押し寄せ砕け散る」という意味なので、umが付くと「何かを囲んで波が打ち寄せる」という意味になります。要するに禁欲者達の集団が、大洋に浮かぶ孤島のような存在で、その周りに「現世」が押し寄せるイメージです。その解釈は「現世の内部で、あるいは本来的には外部で」という表現とぴったり整合します。
折原訳の「周囲で平均的人間と衝突し」は主語と目的語が逆な上に、主語が単数であることを見落とした誤訳です。

原文
Stets aber wird dann, infolge der Verschiedenheit der religiösen Qualifikation, ein solcher Zusammenschluß des Asketentums eine aristokratische Sonderorganisation innerhalb oder eigentlich außerhalb der Welt der Durchschnittsmenschen, die sie umbrandet — darin von »Klassen« prinzipiell nicht unterschieden.

折原訳
ところが、そうした禁欲者の結集態は、やがてはつねに、宗教的資質の差異のため、平均的な人間の世界の内部、というよりも、ほんとうのところはその外部に、貴族主義的な特別組織をつくり、周囲で平均的人間と衝突し、その点で原理上「階級」と区別されないものとなる。

丸山訳
それぞれの宗教的な資質の違いの結果として、平均的な人間の集う現世の内部で、あるいはそもそもは現世の外部で、そういった現世は禁欲者達の集団を囲んで波濤のように押し寄せているのであるが、貴族政的な特別な組織となり--そこにおいてはそれは「階級」と原理的に区別がつかなくなる。

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