折原浩訳の問題点(216)

ここはeine nie fortzudatierende Stützeの訳の問題。折原訳の「この点はけっして無視されてはならない。」はどこにも書かれていないことを訳しています。fortzudatierendeの意味は「先日付の」ということです。小切手であれば先日付であればその日が来るまで換金出来ません。それにnieが付いているので、「決して先日付ではない→今すぐに有効である」という意味です。なので「先の話ではなく今すぐに頼ることの出来る支柱であった」ということです。創文社訳の「不可欠であった」も間違いです。要するにイエスにとって、将来の救済の約束ではなく、その場その場での奇蹟の実施が彼の存在理由を支えた、ということです。

原文
Magie und Dämonenglauben stehen nun auch an der Wiege der zweiten großen, in einem spezifischen Sinn »weltablehnenden« Religion: des alten Christentums. Sein Heiland ist vor allen Dingen ein Magier, das magische Charisma eine nie fortzudatierende Stütze seines spezifischen Selbstgefühls.

折原訳
ところで、魔術と悪霊信仰は、固有の意味で「現世拒否的」な第二の大宗教、すなわち古キリスト教の発生にもかかわりがある。キリスト教の救世主は、なにものにもまして魔術師であり、魔術カリスマがかれ特有の自負心を支えたのであり、この点はけっして無視されてはならない。

丸山訳
さて魔術と悪魔信仰は、特別な意味での「現世拒否的」な二番目の大宗教の揺籃期においてもまた存在している:つまり古キリスト教である。その救世主は何よりもまず魔術師であり、その魔術的なカリスマが、イエスの特別な自己の存在の感覚の、先の話ではなく今すぐに頼ることの出来る支柱であったのである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA