折原訳の最後の「全てを決定している。」は完全な誤訳。「全く決定的なことなのである」。初級者でも分かる内容です。
また[]の補足は全て無くても分かるようなもので不要。むしろ必要なのは「ラザロの伝説」の訳注による説明。
原文
Deshalb, um sich Schätze im Himmel zu sammeln, soll man auch dem leihen, von dem man vielleicht nichts wiederbekommen wird, — denn sonst ist es kein Verdienst. Mit dem gerechten Ausgleich der Schicksale wird stark in der Lazaruslegende und auch sonst gelegentlich operiert: schon deshalb also ist Reichtum eine gefährliche Gabe. Im übrigen ist aber völlig entscheidend die absolute Indifferenz der Welt und ihrer Angelegenheiten.
折原訳
それゆえまた、天に宝を積もうとすれば、なにも返してはもらえないであろう相手にも、貸してやるべきである。そうでなければ[返してもらうことをあてにして貸すのであれば]、なんの功績[功徳]にもならない。運命は公正に埋め合わされるという思想は、ラザロ伝説で主題として採り上げられ、強調されているが、それ以外のところでも、ときどき採り上げられている。すでにその点からいっても、富は[不運に反転する]危険を孕む賜物である。しかし、それ以外の点では、現世とその諸案件にたいする完全な無関心が、全てを決定している。
丸山訳
それ故に、天においての財を自らのために集めるためには、人はまた、ひょっとすると何も返してもらえないかもしれない相手にも貸してやるべきであり、--というのはそうでなければ、その行為は何らの功徳とはならないのである。運命の公平な平準化については、はっきりとラザロの伝説[1]とまたそれ以外でも時々用いられてる:既にその理由で富は危険な賜物である。その他の点では、しかし、現世とその諸問題についての徹底した無関心が、全く決定的なことなのである。
[1] ルカ:16:19-31。ある金持ちとその門前で乞食をしていたラザロが、死後は金持ちは陰府で苛まれ、それに対しラザロは宴席でアブラハムの側でもてなされた、という話。