また折原訳の問題点。
Rentnerを「不労所得生活者」、Pfründnerを「俸禄受給者」と訳しています。いずれも間違いとまではいえませんが、RenteもPfründeもヴェーバーでは非常に重要な概念であり、Renteの「定期的に入ってくる、労働の対価ではない収入→家賃や土地貸し料、利子、年金など」という意味の半分しか訳せていません。またレンテは経営による収益と対になる概念です。後者は単なる俸禄ではなく、レーエンと対になる概念で、官僚や聖職者などの特殊専門職に与えられる給与でその特権的な地位とセットになっている意味が全く出ていませんし、何より世良晃志郎さんが「支配の社会学」などの訳で訳注を付けた上で「プフリュンデ」としていますので、それに合わせるべきと思います。何より「経済と社会」の再構成を主張している人が、こういう他でも出てくる重要概念を適当に訳しているのは問題です。
原文
Diese philosophische, von — durchschnittlich — sozial und ökonomisch versorgten Klassen, vornehmlich von apolitischen Adligen oder Rentnern, Beamten, kirchlichen, klösterlichen, Hochschul- oder anderen Pfründnern irgendwelcher Art getragene Art von Intellektualismus ist aber nicht die einzige und oft nicht die vornehmlich religiös relevante.
折原訳
さて、この種の哲学的知性主義は、社会的また経済的に平均的にみて恵まれた階級、とりわけ非政治的な貴族、不労所得生活者、官吏、教会・修道院・大学その他、なんらかの種類の俸祿受給者、によって担われるが、けっして唯一の知性主義ではないし、とくに宗教的な意義をそなえた知性主義にかぎってみても、しばしばその主要形態ではない。
丸山訳
このような哲学的な、--平均して--社会的・経済的に生活に余裕がある諸階級、特に非政治的な貴族またはレンテ生活者 1) 、官僚、教会の、修道院の--または他の何らかの形のプフリュンデ 2) 生活者によって担われた主知主義はしかし、主知主義の唯一のものではないし、またしばしば宗教的に特別に重要なものでもない。
1) 地代などの労働を伴わないで定期的に入ってくる収入によって暮らしている者。
2) レーエン(封建制に基づく土地の授与)と対比される語で、家産制国家において特定の職務についている官僚などに対し与えられる俸給のことをこう呼ぶ。また教会で聖職者に与えられる俸禄のことも指す。